イノベーションが加速度的に進む現在、意思決定の速さ(時間)はヒト・モノ・カネ・情報という経営資源を凌駕するほどの大きな価値を持つようになった。ウォンテッドリーでは設立初期から、Valueの一つに「Move Fast」を掲げており、とにかく速く動く姿勢を大事にしている。
この「Move Fast」を誰よりも体現しているのが、2024年4月に入社したプロダクトデザイナーの紀平 成美(きひら なるみ)だ。圧倒的なスピードでアウトプットを量産し、プロジェクト推進の原動力となっている紀平の存在感は日に日に増し、メンバーからは親しみを込めて「工場長」という愛称で呼ばれている。
今回はそんな彼女に、スピードにこだわる理由やウォンテッドリーでプロダクトデザイナーとして働く魅力などを率直に語ってもらった。
<インタビュー・編集協力:後藤あゆみ>
バックオフィス経由で、UIデザイナーの道へ
ーーまずはこれまでのキャリアについて。以前は経理をしていたと聞いたのですが、どのような経緯でデザイナーにキャリアチェンジされたのでしょうか?
紀平:これまで約7年間ほど経理として働いてきました。この先もバックオフィスとしてのキャリアを築いていこう。ぼんやりと、そんな人生設計を描いていましたね。ですが、ある日、勤務先だったデザイン会社のバックオフィス機能が親会社と統合されるかもという話を耳にしまして。私の業務がまるっとなくなる可能性が出てきたんです。
これからどうなるのかと不安になっていた矢先、上司に呼び出されました。その場で「紀平さん、大学でデザインを学んでいたよね?UIデザイナーやってみない?」と打診を受けたんです。
たしかに大学では芸術工学を専攻していたので、基礎的なデザイン知識はありました。ビジュアルを制作したり、イラストを描いたりすることはずっと好きでしたね。ただ、デザインを仕事にするイメージはわかずにいて。趣味の範疇を超えて、仕事にできるほどのレベルなのかという葛藤がありました。
ですが、UIデザイナーであれば、デザインスキルだけでなく、構造を分かりやすく整理する力や、データを論理的に分析して効率的なプロセスを描く力も求められる。バックオフィス業務では、普段から様々な管理ツールを扱うことが多く、システム構造に慣れていたこともあり、情報設計や構造整理を行うUIデザインの仕事に、これまでの経験が活かせそうだなと感じました。
ーー そこから社内のクリエイティブテストを受けて、UIデザイナーに転身されたと。異動後は、どのような仕事に携わってきたのでしょうか?
紀平:いわゆるクライアントワークで、WebサイトやスマホアプリのUI改修をメインに担当しました。印象に残っているのは、BtoB向け請求関連ツールのプロジェクトです。約2年におよぶ長期プロジェクトで、機能の要件定義から関わることができました。クライアントとは1日に4時間以上の打ち合わせをすることもあったりと、One Teamで同じ目標に向かって突き進む楽しさを経験できましたね。
ーー充実しているように見えるのですが、転職を考え始めたのはどんなきっかけがあったのでしょうか?
紀平:「自分の価値を提供できる範囲を広めていきたい」という想いが芽生えたのがきっかけです。社内にはUXデザイナーが別にいたので、必ずしもすべてのプロジェクトで要求定義や要件定義に携われるわけではありませんでした。
また納品して終わりではなく、その先にいるユーザーにちゃんと価値が提供できているかどうか。自分の仕事の影響力や施策の効果を、つぶさに計測していきたいと考えるようになって。自然と「事業会社で働く」というビジョンを見据えるようになりました。
ーー事業会社の中でも、ウォンテッドリーに興味を持った理由を教えてください
紀平:前職でもWantedlyを採用ツールとして導入していたので、私自身も管理画面にふれる機会が多くありました。説明的でなく、直感的でわかりやすい。たとえば「保存ボタンを押さなくても、自動保存される」など、初心者でも使いやすいプロダクトという印象を持っていましたね。
選考に進んだのはスカウトをもらったことがきっかけでした。カジュアル面談を通じて、一緒に働くメンバーの人柄や会社の雰囲気を知ることができたのは良かったです。「Bar W」という社内イベントにも招待してもらい、そこではエンジニアのメンバーとも交流でき、フランクな会話を楽しんだことを覚えています。「どこで、なにをやるのか」だけではなく、「誰と一緒に働くのか」という点も同じくらい大切だと考えていた私にとって、メンバーの人柄が分かり、一緒に働くイメージができたのは大きかったですね。
第14回となるBar Wのテーマは「お出汁」。社内に掲載されたチラシ(写真左)の制作は紀平が担当した。
第一走者として、意思決定を加速させる
ーーウォンテッドリーに入社された後は、どのようなプロジェクトに携わってきたのでしょうか?
紀平:いま私が所属しているのは、クライアントグロースチームです。Wantedly利用企業のプロダクト体験を向上させるために、スカウト機能の改善や新機能の開発を進めています。まだ実装前の機能が多く、伝えられることが少なくて申し訳ないのですが、Wantedlyを通じて良い出会いが多く生まれるように、PdMやエンジニアのメンバーと密にコミュニケーションを取っています。
ーー仕事を進める上で、紀平さんが大切にしているスタンスを教えてください
紀平:端的にいうと、「速さにこだわる」ことですかね。その背景を分かりやすく伝えるために、現チームの業務プロセスを説明させていただきますね。まずはPdMが作成したPRD(プロダクト要求仕様書)をもとに、プロダクトデザイナーがプロトタイプを作成します。そのプロトタイプをもとにエンジニアを含めてチーム内で議論を交わし、必要なメンバーをアサインし、リリースに向けて開発していく…という流れです。
つまり、プロダクトデザイナーである私が、いかにプロトタイプを素早くかつ量産できるかが、リリースまでの期間を最短で進める鍵を握るのです。リレーでいうと、第一走者という気持ち。とにかく速く、みんなにバトンを渡せるようにスタートダッシュをしていくイメージです。
もちろんプロトタイプがなくても議論を進めることはできると思います。けれど、いわゆる「視覚的なアウトプット」があることで、チームに共有する前にPdMからフィードバックをもらえたり、チーム全体の認識をスムーズに統一できたりとメリットが多いと感じていますね。
議論を加速させ、意思決定を加速させることは、Valueに掲げている「Move Fast」をまさに体現する行動です。以前、所属していたチーム時代の話ですが、気がつけば約3ヶ月間で170を超えるプロトタイプを制作していた時は、さすがに自分でも驚きましたが。
制作したプロトタイプの一例。メンバー全員が同じ絵を見ることで、議論が加速する。
ーーこうしたスピードにこだわりながらプロトタイプを量産する姿勢が、みんなから「工場長」と呼ばれる所以なんですね。ちなみに多くのプロトタイプを作成するのにコツはあるのでしょうか?
紀平:こう言うと聞こえが良くないかもしれませんが、「あまり悩まないこと」ですかね。悩むよりも素早くフィードバックをもらうことが大切だと思っているので、PRDに対して最小工数で必要十分なものを作る。なにもPRDをすべて理解してなくてもOKです。そもそも初期の段階だと、言語化できていない点も多くあると思いますので。
これまでスピード重視の話をしてきましたが、クオリティをないがしろにしているわけではありません。私一人でアウトプットできるクオリティには限界がある。多くのメンバーに見てもらい、そしてその先の企業の皆さまに利用してもらうことで、ようやく最適解に辿り着けるのです。
ウォンテッドリーには、「Get Things Done」というValueがあります。完璧よりも、まずは完成を目指すことで、フィードバックサイクルや効果検証をスピーディーにまわすことができる。こちらも私が好きなValueの一つですね。
Valueの社内浸透のために、デザインチームが制作したポスター。
▼ウォンテッドリーが掲げるVALUE
https://wantedlyinc.com/ja/careers/values
あらゆる場所で、マッチングを増やすために
ーー入社して半年以上が経ちましたが、ウォンテッドリーのプロダクトデザイナーとして働くことの魅力を教えてください
紀平:まわりと団結しながら、ミッション達成に向けて前進できるところですね。ウォンテッドリーでは、「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」というミッションを掲げています。その実現のために私たちのチームでは、「ユーザー体験を改善し、プロダクトの価値をより多くの人に届けること」を目指して取り組んでいます。
ユーザー体験を重視する姿勢が全員に浸透しているので、議論もユーザーを主語にして進むことが多いです。PdMもエンジニアも含めて、「みんながUXデザイナー」というスローガンがチームに行き届いていて、そうしたマインドを全員がもっているチームは、なかなか珍しいのではないでしょうか。
同じ志を持ちながらも、自分とは異なる視点を持った仲間と一緒に働ける。新しい知見が得られるので、自己成長という観点でも魅力を感じていますね。
ーープロダクトチームの雰囲気はいかがでしょうか?
紀平:現在、私を含めて4名のメンバーが在籍していますが、みんなデザインへの感度が高いですね。デザインのトレンドや他社のアップデート記事などを社内のチャットで共有し合っていて、私もそこから情報を得ています。
また、学習機会も多いです。たとえば継続的なインプットとアウトプットを目的に、輪読会を月1回のペースで開催しています。UIやアジャイル開発を中心とした書籍の担当パートをそれぞれが読み、スライドに感想や疑問をまとめていきます。
自分が読んでいないパートも、みんなの意見を聞いてインプットができるので、とても効率的です。「そういえば、この課題の乗り越え方、あの本に書いてあったな」といったように、日々の業務でも活かせるヒントが見つかったりしていますね。
|輪読会のアウトプット。5枚前後のスライドに感想をまとめて、意見を交わしていく。
ーー現在、課題に感じていることはありますか?
紀平:Wantedlyはローンチから10年以上経ち、着実に進化を続けてきたプロダクトです。その間、ブランドの成長、ユーザー層の変化、ツールのアップデートも起きているので、デザインシステムやTone of Voiceなども同様にアップデートしていく必要性があります。ただ、今はどうしても目の前の施策を優先し、手が届いていない部分もあるので、このあたりも計画的に着手していきたいです。
また、Wantedlyを利用しているのは都内のスタートアップ企業が多いイメージがありますが、事業フェーズや地域問わず、長期的にご利用いただいている企業も当然あります。ですが、母数を比較するとまだまだ少ないというのが現状です。ポジティブに捉えれば伸びしろがあるということなので、アクティブユーザー数の成長を担っているチームとも連携しながら、クライアントとユーザー双方の体験を向上させて、マッチングを増やしていきたいですね。
ーー最後に、紀平さんがこの先に描いているビジョンを教えてください
紀平:目先としては、チームのミッションであるスカウト機能の改善を進めることですね。多くの出会いを創出することで、プロダクト体験を向上させ、まだWantedlyを知らなかった企業の皆さんにも興味を持ってもらう。そんなスパイラルを生み出すことができれば、最高です。
個人としては、ゼロイチベースの業務に携わりたいと思っています。スカウト以外の新しい機能の開発や、新規プロダクトの開発など。特にプロダクトをゼロから作り込む経験は、いつか挑戦してみたいですね。そのためにはスキルアップが必須ですので、仲間と一緒に切磋琢磨していければなと。一歩一歩、進んだ結果として、これまでに見えなかった景色に辿り着けたら嬉しいです。
経理から始まり、プロダクトデザイナーに転身した私のキャリア。この先はもっとワクワクするような予想できない未来が、ウォンテッドリーで待っているかもしれません。