「転職活動中の面接では、好きなプロダクトデザインはありますか?ってよく聞かれたんですけど。私は、そのたびに『Wantedlyが好きです』と答えていました」
そう語るのは、2024年3月に入社したプロダクトデザイナーの岩本 夏音(いわもと かのん)だ。Wantedlyのファンを自称し、熱い思いを抱き続けてきた彼女が、「中の人」として事業をグロースさせる立場を歩み始めてから、半年あまり。プロダクトへの情熱、直面した苦悩や葛藤、そして未来の展望について。インタビューにて、入社後のリアルに迫った。
<インタビュー・編集協力:後藤あゆみ>
運命を変えた、一冊の就職体験記
ーー新卒からデザイナーとして活躍されていましたが、いつからデザインの仕事に興味を持たれたのでしょうか?
岩本:デザイナーを目指し始めたのは大学4年生の春頃ですかね。企業へのエントリーなど就活が本格的に始まったタイミングなので、かなり遅めだと思います。就活のことを考え始めた3年生の頃は漠然と営業職に絞って探していたものの、「スーツを着ながらバリバリ働く自分」という姿があまりイメージできなくて。大学では日本文学を専攻していたのですが、いったんフラットになって、自分の好きなことを見つめ直そうと考えたんです。
そんな時に、自宅のポストに届いたのが一冊の就職体験記でした。そこには、私と同じ文系出身の女性が、Webデザイナーとして就職した話が綴られていたんです。簡単に内容を紹介すると、その方はもともと絵を描くとか、表現をすることが好きだったそうで。ただ、デザイナーは才能がある人がなるもので、自分には遠い存在と考えていたとのこと。けれど就活のタイミングで「自分が本当に打ち込みたいことは、何かを作り出すことだ」と本心に気づき、それに向き合うことを決断して、デザイナーを目指した…という話でした。
読み込むうちに、「私のやりたいことはデザインかもしれない」と、ビビッときたというか、運命めいたもの感じたんです。というのも私自身もつくることや表現することは好きだったのですが、仕事にできるイメージなんて持っていませんでした。自分で自分の可能性を押さえつけていただけかもしれないと、体験記に背中を押されるかたちでデザインスクールに通うことを決めたんです。それからWスクール生活を送りながら、Webデザインの基礎を学んでいきました。
ーー就職活動を終えて、念願のデザイナーとしてのファーストキャリアをスタートされましたが、どのような仕事に携わっていたのでしょうか?
岩本:前職はXR/AR事業を展開する会社で、UIデザインをメインに手がけていました。まだまだ歴史が浅い領域なので、自分たちで未来をつくっていける点に魅力を感じていましたね。私の配属部署では、クライアントからの受託開発が中心ではあったものの、上流工程から携われたので、ユーザーリサーチ、UIデザイン、コーディングなど幅広い経験を積めました。
ただデザイナーとして働いたのは、入社から6ヶ月ほどでして。スタートアップには、よくある話だと思いますが、事業方針の転換によって、新しい部署にマーケティング担当として異動することになったんです。
そこでは、プレスリリースやオウンドメディアの執筆、商談同席など、仕事の幅がぐんと広がりました。総合力が高められると感じていた一方で、「デザイナーとしての専門性を高めていきたい」「デザインで世の中に価値を生み出したい」という想いを捨てきれず、転職を考えはじめました。
ーーウォンテッドリーを転職先に選んだ決め手を教えてください。
岩本:転職の軸として考えていた、「デザイナーとして成長できる環境がある」「クオリティの高いプロダクトに携われる」という2点が叶えられると思えたからです。
…という観点もあるのですが、そもそも私が学生時代からWantedlyユーザーであり、いちファンだったということが一番大きいですかね。「カジュアル面談」という、気軽に会社に訪問できる仕組み、会社や人の素顔が見える会社ページとプロフィールページ、そして洗練されたUI/UX。就活中に会社探しで利用して、楽しいと思えたサービスは、後にも先にもWantedlyだけでした。
デザインが細部まで行き届いていて、きっと熱意のあるデザイナーが向き合っているんだろうなと好印象をもっていました。そんな方たちに囲まれて働けるのは、とても魅力的だし、自分が好きなプロダクトの価値を高めていく仕事に巡り会えるチャンスなんて滅多にない。「Wantedlyの成長に関われるなら、どんなデザインでもやりたい」と。いちファンから卒業して、事業をグロースさせていきたいと、迷うことなく入社を決めました。
自身のユーザー体験を生かして、仮説を磨き込む
ーー現在担当している業務とミッションを教えてください。
岩本:一言でいうと、toBとtoC問わずWantedlyを利用するユーザーの体験を良くすることです。昨期の取り組みは2つありまして、toB向け施策としては「スカウトを経由した候補者とのマッチング数の増加」を、学生や社会人ユーザーなどのtoC向け施策としては「アクティブユーザー数の増加」をミッションに掲げていました。
仕事の流れとしては、PdMが要求定義したものを受けて、ユーザーリサーチを行い、課題解決が見込めそうであればUIを磨き込むといった感じです。もちろんPdMからおりてくる要求に対応するだけではありません。自ら課題に感じていることがあれば、毎日開催しているミーティング内で、全体に提議することもできます。
ーー現在にいたるまでで、印象に残っている仕事を教えてください。
岩本:成果が数字になって現れた仕事は嬉しくて覚えていますね。最近の施策ですと、ユーザーが企業からのスカウトに対して、素早く返信できるように「クイック返信」という機能を実装しました。
複数のUI案と、最終的に実装されたUI(右)
自分も、過去の体験として「この企業、気になるんだけど、なんて返信すれば良いんだろう」と考えているうちに放置してしまったことがあって。返信にかける心理的工数を減らせば、返信率は高まるのではないか?という仮説のもとプロジェクトはスタートしました。
ただ、チーム内では「丁寧に返信したい人もいるはずなので、テンプレートを実装したほうが良いのでは?」という意見も出て、慎重に議論を進めました。最終的には、「ワンタッチ返信を軸に、ニーズに応じてテキストを編集できるようにする」という方向で着地することに。実装後、返信率は向上し、ユーザーの課題解決に貢献できていると実感できた時は嬉しかったですね。
他にも、プロフィール画面の改善にも着手しました。たとえばストーリーの一覧ページの追加です。プロフィール内だけでは表現できない仕事への想いや価値観などを発信することで、興味を持った企業とのマッチングが増えることを期待しました。
仮説は当たらないことのほうが多い。なので「数ある仮説の中から、どれを優先的に取り組むか」「外れた仮説から何を学ぶか」などを意識して、より精度の高い仮説検証ができるように心がけています。反応は数値に現れるので、毎日、手触り感をもって仕事に取り組めていますよ。
成長実感が得られる、まさに望んでいた環境
ーー入社して間もない中で不安もあったと思いますが、まわりのデザイナーとのコミュニケーションはいかがでしょうか?
岩本:仕事の進め方も前職と全然違うので、最初は戸惑いもありました。ですが、相談できる場が多く設けられているので助かりましたね。
例えばプロダクトデザインのチームでは、毎日定例を開催しています。つまずいていることを共有すれば、チームメンバーが解決策を一緒に考えてくれるので、一人で抱えこむ心配はありませんでした。加えて、自分では導き出せなかった示唆を得られるので、とても勉強にもなっています。
自分自身、まだまだ成長段階だと思うので、こうしたフィードバックを得られる環境を望んでいたこともあり、感謝しています。ときには、1pixel単位での細かいフィードバックをもらうこともあるのですが、「細部にこだわってデザインしたい!」と思っていたので、こちらも実は希望通りでした。
ーー毎日の頻度で定例があるのはすごいですね。1on1で個別に話す機会もあるのでしょうか?
岩本:リーダーとメンターとは週1回のペースで1on1を実施しています。メンターとの時間では、仕事を進める上での個人的な悩みなどを相談していますね。私はデザインの良し悪しを言語化するのが苦手だったんですが、相談したところ、「他社のプロダクトを操作してみて、体験における良い点・改善点をまとめてみたら?」とアドバイスをもらいました。
それから「言語化ワークショップ」と題して、1on1の際に3分でプレゼンすることを続けてきました。その効果もあってか、今はミーティング中でも自分の考えをまとめて述べられるようになりましたね。
他にも、既存のデザインシステムに固執するあまり、表現が限定されてしまうことで悩んだことがありました。デザインシステムに則ると、こういうアウトプットになる。でも、それでは課題を解決できなくて…という葛藤に苛まれました。そんな私を見かねてか、メンターが「まずは事業効果とか工数とか意識せずに、理想を描いてほしい」と声をかけてくれて、はっとしたんです。ユーザーが理想とする世界を表現することが、プロダクトデザイナーの存在価値である。もっと自由でいいのだと、目の前の扉がパッと開いた感覚になりましたね。
余白がある。だから、まだまだチャレンジできる
ーーウォンテッドリーのプロダクトデザイナーとして働く魅力を教えてください。
岩本:いちユーザーだった時は、すでに完成されているプロダクトという印象を受けていました。しかし入社して気づいたのは、意外と余白が残されているということです。会社やプロダクトの課題も山積みなので、デザイナーとしてどう解決していくか。毎日、クリエイティビティを持ちながら挑戦できています。
また自身のアウトプットを定期的に発信できる場があることも魅力に感じていますね。例えば、社内向けには各チームがプロジェクトの成果を共有するDemo Dayと呼ばれるミーティングがありますし、社外向けにもライトニングトークを定期的に開催しています。
アウトプットすることで、自分の思考も整理できるし、共有するためにも良い仕事をしようというモチベーションを高めるきっかけになる。良いことずくめです。
ーーウォンテッドリーには、どんなデザイナーが向いていますか?
岩本:理想を追求しつつも、独りよがりにならないで、まわりとコミュニケーションを取りながら進めていけるタイプですかね。というのも、ウォンテッドリーはエンジニアも含めて、みんなでプロダクトを良くしていこうという気概が強いからです。
その背景としては、カルチャーが根付いているのが大きいと思います。毎年発行されているカルチャーブックというものがあるのですが、そこにはウォンテッドリーの創業時からの歩みや、ミッション、バリューなどが綴られています。カルチャーに共感している人たちが集まっている。だから、全員が同じ認識を持って、ブレずにプロダクトの成長に向き合っていけるのだと思います。
ーー最後に、岩本さんの今後の展望を教えてください
「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」というミッションを実現するために、既存ユーザーの利用体験の向上はもちろん、新規ユーザーの認知・獲得施策にも携わっていきたいと考えています。自分が大好きなプロダクトを、どんどん世の中に広めていきたい想いです。
個人としては、いまはプロダクトメインですが、デジタルにとらわれず、いろいろな表現ができるデザイナーになりたいです。そのためにも、世の中にあるデザインに多く触れて、自分の感性を磨いていけたらなと。
Wantedlyは、まだまだ伸びしろのあるプロダクト。私自身も成長して、プロダクトの成長に貢献できたらと思っています。手を挙げれば、いろいろなことに挑戦させてくれる環境なので、自分の影響範囲を広げていけると嬉しいですね。数年後、自分の肩書きがプロダクトデザイナーだけでなく、新しく増えていたら…。なんて想像してみると、ココロオドリますね。
ウォンテッドリーのデザインチームの情報は下記からご確認いただけます。アウトプットやデザイン解説などを定期的に発信していますので、興味をお持ちいただた方はぜひご覧ください。
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